幼稚園では、発表会(俗に言うお遊戯会)も終わり、ほっと一息、子どもたちは寒空の下、外で元気に駆け回っています。
この時期の園庭では、静かに、そして着々と遊びの世代交代が行われていくのです。
年長の子どもたちは卒園式へ向けた練習がはじまりますので、自由遊びの時間の園庭では年少と年中の子どもたちだけが遊んでいるわけです、おもしろいもので、普段園内のサッカーコートは年長が独占していて、それを横目に年中や年少の子どもは遠巻きにボールを蹴ったり、時々こぼれてくるボールを拾いに行くぐらいのものなのだけど、年長がいなくなるやいなや、ここぞとばかりに年中の男の子たちがサッカーコートにはいりサッカーをやるのです、すこし誇らしげに、でもちょっと遠慮がちに。
サッカーだけでなく、ドッジボールも、お団子つくりも、砂場遊びも、お店やさんごっこも、おままごとも、電車ごっこも、長縄も、年上の子どもたちがやっている遊びを横目に見ていた子どもたちが、あこがれのお兄さんお姉さんたちの遊びを真似して自分たちのものにしていくわけです。そうして脈々と遊びが受け継がれ世代交代をしていく様がこの時期になるとよくみられます。
こうして子どもたちが着実に成長している姿を目の当たりにできることが、この仕事のおもしろさであり、醍醐味であると感じます。
「遊び」というのは、子どもの成長を見るうえでとても大切な事です。
幼稚園にきたばかりの子どもは、まだまだ1人の世界にはいりこみ1人遊びをすることが多くて、そこから友達と関わること、関わる楽しさを感じ始めると、今度はその自分の世界を少しづつまわりの子どもと共有し始めるわけです、一生懸命に言葉をつかい、みぶりてぶりを交えながら自分の世界を伝え共有しようとします。ここでうまくいかなくて喧嘩になったり、悲しい思いをしながら、心もしっかりと鍛えられていきます。
そして少しずつイメージの共有ができるようになると、自分がヒーローになるだけだった遊びは、みんなでヒーローになって敵と戦うことができるようになります。自分がお母さんになるだけだったおままごとも、家族単位で役割分担ができるようになります。
みんなでおなじイメージの中にどっぷりと入り込んで遊ぶことを覚えると、今度はそのイメージを現実の世界に落とし込んでいきます。
基地はどこなのか、基地に入るための合い言葉をどうしようか、仲間がわかるように帽子のかぶり方を変えてみようかなど。一つに遊びに自分たちでルールと決まりをつくり、またその遊びを少しでも長く楽しく続けていけるように、手加減を覚えたり、相手の立場を考えたりしながら遊びを継続させていきます。そうしてさらに遊びの幅を広げていくのです。
たかが「戦いごっこ」たかが「おままごと」ではなく子どもにとって、それはまさに目に見える成長の証だと思います。
この時期の子どもたちの遊びは本当に大人も想像もつかないような深さと幅で展開されていきます。これは大人が遊んであげている遊びの中では絶対に作り出せないものです、子どもたちが友達どうしの中で長い時間をかけることでしかつくられないものです。
遊びの中で培われるものの中には、これから子どもたちが社会にでていくときに必要であろう様々な大切なことがたくさん詰め込まれているような気がします。
遊びを通して子どもたちの成長を感じられることがとてもおもしろいです、そしてそんな子どもたちももう1ヶ月もすると1つ大きな学年になり、年長の子どもたちは卒園していきます。少し寂しいですが、また4月になれば、はじめて社会に第一歩を踏み出した子どもたちと出会えるのかと思うと楽しみにもなります。
副住職
遠藤正樹
副住職さま
「遊び」拝読させていただきありがとうございました。
遊びの場をととのえるにはいろいろご苦労もあるかと思いますが、子どもたちが成長していくさまを見られるは確かに醍醐味ですね。一方、この先も日本はタテ社会のままでしょうから将来働くようになると何か違うと戸惑うこともあるかと思います。遊びで成り立つコミュニケーションが社会に出たとたんそうでなくなるのが困ったことで、教育の後工程のどこかで実学を学ぶ機会があればいいなと思います。せめて幼稚園では思う存分創造的に遊ばせてください。
遠藤正樹
副住職
実学は大事ですね、子どもたちが社会に出て思い通りにいかなくなったときにも、その気持ちが折れないように、腐らないようにしなやかにいられるようになるためには、この時期にたくさん遊び、心と体を使うことの心地よさを覚え、また創造することの楽しさをしることがなによりも大切な気がしています。
これから暖かくなったらますます色々な遊びができるので楽しみです。
副住職