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お彼岸が過ぎて、春の風が吹いて、気候も穏やかになってきました。
桜の花も一気に開花したようです。
当たり前のことですが、ちゃんとその時期になると、その時期の花が咲くというのは、よくよく考えてみると不思議なことであります。
それが日照時間だけなのか、他にもたくさんの影響があるのかわかりませんが、いろいろな変化が起きていて、そのすべての要因のひとつひとつがさくらのつぼみを膨らませ開花させています。
なにかその要因がひとつでもそろわなければ花は咲かないのかもしれませんが、毎年毎年、その多くの要因が日々刻々とした変化の中で実り、花をつけ、しっかりと咲き誇り、やがて風が吹けば散っていくわけです。
あらためてその一つの現象をよくよく感ずるにそこには人間の頭や知識だけでは計り知れない数多くの縁があるように感じます。
先日、ある方と話をしているときに、その方が、
「生きる」ということがある瞬間に「生かされている」という感覚に変わってきたとおっしゃっていました。
命があるという意味でいえば、生きるでも生かされているでも同じなのかもしれませんが、この命がここにあるという現実をどのように受け止めるのかということは浄土真宗の教えの中でもとても大事な根幹につながってくることだと感じます。
生きているというのは、自分自身が能動的に命を発しているようなニュアンスが感じ取れますが、生かされているというのは、命というものにとても受動的であるように感じます。
その命ということを考えたときに、その言葉、その話が先ほどの桜の話にもつながってくるように思います。
植物でも人間でも、この命という現象、事実は目に見えぬたくさんの縁の中に、影響されて縁がそろえば実をつけ、縁がそろわねば実はつかぬわけです。
雨が降り、あたたかな日差しがさせば、緑は芽吹き、風が吹けば花は散るわけです。風に吹くな、雨よ降るな、太陽よさすなといってもそれは自分の範疇を越えた先にやってきます。
やなぎの葉が風に揺れるように、人間の人生もそのような不可抗力、たくさんのご縁を意識的にも無意識的にもたくさんうけて、右に左になびきながら、ときに幹が傾いたり枝が折れたり、またそこから新しい芽を芽吹いたりしながら、それがいい影響を、そしてときにそれは悪い影響を及ぼしながら生きています。
自分の意思というと自分の自我の中から発露してくるもののようですが、自我もすでのこの大きなご縁の影響を存分に受けてつくられていくわけです。
そしてそのたくさんの影響を受けながらこの瞬間、こうして息をして、ひとつひとつ鼓動している命がここにあるわけです。
「生きる」ということ「生かされている」ということ、この2つの違いはこのような視点の中から生まれてくるように思います。
この視点の違いはすなわち、自分からみた視点と同時に、俯瞰的な大きな視点を獲得するということでもあります。このおおきな俯瞰的な視点を持つことで、人間は自分自身の分限をより明確に知ることができるのかもしれません。
その分限を越えた先になにがあるのか、それが聖道浄土のかはりめにつながってくるのかもしれません。
念ずるという漢字は、今に心と書きます。それはこの瞬間に想いを馳せて、過去でも未来でもないこの瞬間に私自身がいるということをしっかりと受け止めてお念仏を申すことは、すなわち、生きていることから「生かされている」ことへの転換であり、その現実をしっかりと受け止めるという心の響きなのではないかとおもいます。
副住職
遠藤 正樹
副住職さま、
「桜さく」拝読させていただきありがとうございました。
人間をながくやっておりますと自分の小さな分限を思い知らされます。それと同時に見栄も体裁も気にしなくなれますからかくあるべしから解放されかくあってもいいと開きなおれます。そして他の人も多分同じだろうなと同病相哀れむが如くのこころ持ちに勝手になってそれが思いやりにつながるような気がします。自分のできる範囲で一向にかまわないので他の人のためになにかできれば一方的にジワッと幸せ感がこみあげてくるように感じます。ともに生き、ともに生かされるそんな風に思います。
遠藤正樹
副住職
ともに生き、ともに生かされるとその心に感謝をして毎日過ごしたいものですが、日々の雑事におわれなかなかそうもいかず、見栄も体裁もまだまだ気にしてしまう自分がいます。
まだまだ分限に気づけていないわが身を思い知らされます。